【書評】けもの道の歩き方―猟師が見つめる日本の自然 著・千松信也

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けもの道の歩き方―猟師が見つめる日本の自然(リトルモア) 著・千松信也

猟師である著者は、銃を使わない「くくりわな」という伝統的な罠猟法でシカやイノシシなどを狩猟する。
生きたまま罠にかかったシカは、後頭部を”どついて”失神させ、頸動脈をナイフで切り、心臓を動かしたまま10分程血抜きをする。
この間、息を荒げ痙攣するシカの体を押さえ、体温を感じながら息耐えるまで、じっと待つ。
その静寂な時間を、命を奪うことに対する気持ちの揺らぎは、今も変わらない、命を絶つ技術は向上しても、殺すことには慣れないと語る著者の言葉が印象的だ。持ち帰ったシカは、自ら解体し、燻製にしてハムにしたり、カレーやシチューの煮込み、またはミンチにしてハンバーグにしたりと、豊かな食の営みが綴られているのも興味が尽きない。

””自分で食べる肉は自分で責任をもって調達したい””

著者はお金を稼ぐ為には狩猟を行わず、飽くまで生活の一部として、自分が食べる肉を調達する為に狩猟する。狩猟以外にも、採集、養蜂、養鶏などの食料自給の実践が事細かに書かれており、その多様な取り組みのレポートは、自然と共に生きる実用書でもあり、現代社会の矛盾を訴えた啓蒙書のようでもある。

明治の文豪、森鴎外は必ず”仕事”を”為事”と書き、仕えるのではなく、為る( する)事と説いた。運送業で現金収入を得ながら、猟期を迎えると猟師と為る、その多様な働き方には、貨幣経済から、しなやかな脱却をはかった”為事”の本質が見えてくる。


千松信也

1974年生まれ。兵庫県出身。京都大学文学部在籍中に狩猟免許を取得し、先輩猟師から伝統のワナ猟(ククリワナ猟)、網猟(無双網猟)を学ぶ。現在も運送会社で働くかたわら猟師を続ける。狩猟8年目を迎えた2008年にリトルモア社より『ぼくは猟師になった』を出版。市民講座や小学生の野外学習等の現場で講演等も行う

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( 出典 千松信也 (@ssenmatsu) | Twitter )

 

Being a hunter in modern society: Shinya Senmatsu at TEDxKyoto 2012

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